学校教育が育成しようとする知的能力の質が、現在、変わりつつあります。
かつては、暗記に頼った詰め込み型の学習や、教師から生徒への一方的な教え込みが主流でした。しかし、現在はそのような受動的な学習から、これからの社会で必要とされる能力を育成する方向にシフトしているのです。現代の教育では、どのような学習方法が採用されているのか、また、どのような学力が身につくのかを今回はご紹介します。
・学習指導要領の改訂による影響
2016年の学習指導要領の改訂以降、日本の教育は、時代に即した学力の育成にますます力を入れるようになりました。例えば、2022年の学習指導要領で実施される必修科目「情報Ⅰ」では、高校生全員がプログラミングを学びます。また、社会の変化に対応するために、生徒の主体的な学習姿勢を育むアクティブラーニング教育など、いくつかの付加的な学力が必要となります。
教育と情報技術
スマートフォンやSNSを通じた学生同士のコミュニケーションなど、教育の現場でもITが活用されています。前述の通り、2022年から高校でプログラミングが必修化され、小学校でもプログラミング教育が始まり、プログラミング能力の育成に力を入れています。「学習の基盤となる資質・能力 」とは、「情報を活用する能力」と定義されます。
学習態度の育成
これまでの授業では、生徒は受け身の姿勢で学んでいました。しかし、学習指導要領の改訂により、「自己完結的・双方向的・深化的な学び」を通じて「何を達成することができるか」を重視する教育へと変化しているのです。
つまり、減点方式のテストで良い成績を取ることを目的とした学習方法から、「何のために学ぶのか」を教員と生徒が共通認識として持ち、生徒の主体的な学びを促すことが重要となってきているのです。
・学力の3要素
時代とともに必要な能力が変化し、学習指導要領が改訂される中で、「緩和」か「詰め込み」かという矛盾した議論を統一するために提示されたのが「学力の3つの特性」です。
学力とは、新しい社会で活躍するために身につけるべき3つの資質の総体であるとされています。
要素1:技能・知識
社会で生き、働くための「知力・技能」の習得は、学校で学ぶ「生きる力」の第一の側面です。
これは、「何を理解し、何ができるのか 」ということを表しています。学力の3要素のうち最も基本的なもので、個人の知識だけでなく、社会で生きていくために、勉強の素材と連動した知識も含まれています。
例えば、歴史の授業で習う過去の出来事について、年表だけでなく、なぜその出来事が起こったのか、後世にどんな影響を与えたのかを知ることで、歴史的な出来事をより深く理解することができます。
また、歴史上の出来事と現在の出来事がどのように結びついているかを学ぶことで、社会で機能するために必要な情報やスキルを身につけることができます。
要素2:推論・判断・表現力
知識と能力を土台にした「思考力・判断力・表現力」が2つ目の要素です。
「わかること、できることの使い方 」を教えることで、新しい事象に対応する力を養います。
現代社会は急速に進化しており、将来の予測に問題があります。問題を発見し、解決の方向性を定め、手法を見極め、戦略を立て、結果を予測しながら計画を実行することで、次の課題を発見し、解決する力を養うことができるのです。
要素3:主体性、多様性、協調性
学んだことを生活や社会に応用する力は、この2つの土台の上に成り立っているのです。「主体性・多様性・協調性」これらの要素によって、子どもたちは社会との関わり方を学び、より良い人生を送るために必要な力を身につけることができます。
これは、学習を日常生活や社会との関わりに適応させることを目的とした「学習能力・人間性」を促進するものです。
これには、知識や技能を活用して、情報をもとに自分の考えを展開し、主体的に学び、多様な考え方を理解し、自分の考えを様々な方法で表現して集団の意見を形成することが含まれます。
・これらの3要素を伸ばすには
時代の変化とともに学習指導要領も変わり、求められる能力も変化していることに起因しています。
義務教育、高校教育、大学受験と、教育の3本柱として最も重要な「学力」は、どのように育成すればよいのでしょうか。
各教科のカリキュラムを教科横断的に学校全体で考える「カリキュラム・マネジメント」は、この問いに対する一つの答えです。
教科を横断した教育内容
これまでは国語、算数、理科、社会といったように各テーマ領域が分かれていました。しかし、今後は、学習内容が教科の枠を超えて相互に影響し合うようなカリキュラムの展開が重要になります。
また、学習指導要領が単に学習時間や総授業時間数を定めていることを逆手にとり、生徒の実態や教育目標に合わせて学習内容を整理していくことが重要になります。
PDCAサイクルを作る
学校は、人と同じようにそれぞれ個性があります。教育の根幹をなす教育目標や重点目標に基づいて、学校全体の「学校グランドデザイン」を構築し、普段から児童生徒と接している教員と連携して、「何を学ぶか」「どう学ぶか 」を明確にすることが必要です。
これにより、子どもたちに身につけさせたい学力や才能を意識したカリキュラムを構築することができます。
地域資源を教育プログラムに取り入れる
基準にもあるように、学力の三部構成の目的のひとつは、児童生徒に社会で生きていく力を提供することです。そのことを児童生徒に自覚させるために、学習と社会の関係を青少年に理解させるカリキュラムを地域と連携して開発することが必要です。
子供たちを全体として育てるために、地域と連携することをカリキュラムに盛り込むことが重要です。
・現在の学習方法の基礎の上に、第三の要素を構築しよう
学力は、全く新しいものではない3つの要素で構成されています。土台となる知識や能力は、従来の学習法で身につけたものと何ら変わりはありません。まず情報の土台を築き、その上で思考力、判断力、表現力、そしてこれらを備えた主体性、多様性、協調性を身につけることです。基礎学習にとどまらず、グループワークやディスカッション、プレゼンテーションなどのコンピテンシーも今後必要になってくるでしょう。今を生きる力を身につけるまで、学びの3つのパートを1つずつ進めていきましょう。