アダプティブラーニングとは、AI(人工知能)などを用いて、生徒一人ひとりに適した課題を提案する学習形態です。アダプティブラーニングは、新しい時代の人材育成方法として注目されています。
今回は、アダプティブラーニングの効果について説明します。
・アダプティブラーニングとは?どのような効果があるの?
アダプティブラーニングとは、学習内容を生徒一人ひとりに合わせて調整することで、より効率的・効果的に学習を進めようとする学習方法です。一般的な授業では、すべての生徒が同じカリキュラムに沿って授業を受けますが、生徒にはそれぞれ得意不得意があるため、供給される学習内容が生徒一人ひとりに適しているとは限りません。アダプティブラーニングは、AI(人工知能)などの技術を用い、データを客観的に分析し、学生の苦手分野や能力状況を把握し、一人ひとりに合った学習教材を提供するものです。これにより、より深く、効果的な学習が可能になります。
・なぜアダプティブラーニングが普及しているの?
文部科学省を筆頭に、政府がアダプティブラーニングを推奨していることも、普及の一因となっています。文部科学省が2008年に発表した「成長戦略の進化に向けた今後の検討方針」によると、これからの社会では、自ら課題を発見し解決するために必要な知識や感性、リーダーシップの育成が不可欠になるとされています。そのためには、コンピテンシーレベルなどのデータを活用し、一人ひとりに合った学習を提供する「アダプティブラーニング」が有効な手段となります。新しい時代の人材育成にアダプティブラーニングを応用する動きが活発化していると言えるかもしれません。
・アダプティブラーニングの種類
アダプティブラーニングは、ルールベース型とアルゴリズム型の2つに分けられます。ルールベースは、各問題の正答・誤答の結果をもとに、次の問題で何をすべきかを判断するものです。このような状況では、いくつかの選択肢について前もって判断しておくことが肝要です。アルゴリズム方式は、学習者がリアルタイムで最適なフローを計算するものです。問題ごとに膨大な計算が必要にもかかわらず、正解・誤答の結果からリアルタイムに経路を決定することができます。
・アダプティブラーニングの5つの効果
アダプティブラーニングは、生徒一人ひとりの状況に合わせて課題を作成する戦略です。子どもたちだけでなく、先生や教育関係者にもメリットがあります。アダプティブラーニングには、次の5つのメリットがあります。
①学習効率の向上が期待できる
アダプティブラーニングでは、児童生徒が苦手な分野や自信のない分野に集中することができます。生徒が苦手とする問題は、理解不足でよく間違える箇所で繰り返し出題されます。生徒が何度も同じ間違いをする場合、復習用の資料が提供され、学習者がその原因を突き止めることができます。次に進む前に、わからない領域を理解するまで学習し、弱点をクリアすることで、内容を理解しないまま先に進むことを食い止めることができます。一方、得意な分野では自分のペースで進めることができ、他の人に合わせる必要がないため、レベルアップが早くなります。一斉授業では、理解できないまま先に進んでしまったり、わかっていても先に進めなかったりすることがあります。
② 講師による質のばらつきが少ない
これまで、個人のレベルに合わせて学習をカスタマイズする方法は、講師の経験や勘で決まっていました。この方法では、講師の指導力や相性によって学習レベルにばらつきがありました。アダプティブラーニングは、膨大な客観的データを分析し、学習プログラムを提示するため、指導者によって学習の質に差が出にくいという特徴があります。そのため、学習レベルを一定に保つことができ、教育者にとってもメリットがあります。
③過去の学習データを活用できる
アダプティブラーニングは、生徒個人のデータだけでなく、過去の生徒のデータも評価・活用できるのが特長です。例えば、難関入試に合格した生徒や塾で優秀な成績を収めた生徒の学習履歴をデータ化し、どのような学習形態が最も効率的かを検証することが可能です。さらに、どのような時に課題が発生しやすいかなどの客観的なデータも得られるため、教師は支援が必要な児童に迅速に対応でき、より効率的・効果的な学習が可能になります。
④個に応じた充実した指導
アダプティブラーニングでは、問題の精度や得点だけでなく、生徒がどの程度学習しているか、特定の問題にどの程度の時間をかけているかなど、多くのデータを収集することができます。教師はこの統計を分析することで、実際の授業でどのように進め、指導し、フォローしていくかを判断するために活用することができます。また、アダプティブラーニングは、教師の指導を代替するのではなく、補完するために利用できることも大きなメリットです。
⑤カリキュラムや教材の見直しが可能
アダプティブラーニングでは、生徒が課題をどれだけこなしたか、どれだけ理解したかだけでなく、各課題が内容の習得を支援するためにどれだけ効果的であったかを評価することができます。また、各課題を評価することで、カリキュラムや教材を定期的に評価・修正することができるというメリットもあります。
・アダプティブラーニングの欠点
アダプティブ・ラーニングには多くの利点があるが、同時に欠点もあります。適応学習を効果的に行うためには、これらの難点を解決する必要があります。
①周囲の環境を整えることが必要
アダプティブラーニングを実施するためには、教育用PCやタブレット端末の導入、ネットワークの構築など、教育現場におけるICT(Information and Communication Technology)環境の整備が必要です。しかし、現代の環境は町や家庭によって異なる。アダプティブラーニングを全員が享受するためには、まずその環境を整える必要があるのが難点です。
②ICTは、講師が意識すべきもの
アダプティブラーニングの実施には、ICTに精通した講師の存在が欠かせません。2021年に文部科学省が行った世論調査によると、義務教育段階でのGIGAスクール構想の第一の関心事は “学校の学習指導での活用 “で、第二の課題は “教員のICT活用指導の力量 “です。また、アダプティブラーニングを効果的に実施するためには、教員のICT能力を向上させる必要があるという課題もあります。
まとめ
アダプティブラーニングとは、AI(人工知能)などを用いて学習者一人ひとりに合わせて学習内容を調整し、効率的・効果的な学習効果を高める手法です。アダプティブラーニングでは、子どもたちが自分のペースで、自分の理解度に合わせて勉強できるようになります。アダプティブラーニングは、情報化社会の進展に伴い、自ら問題を発見し解決するための知識やスキルを高め、次のレベルへ進むための戦略として人気を集めています。今後、アダプティブラーニングはさらに進化していくと予想されます。アダプティブラーニングの利点と欠点について勉強し、より深い知識を身につけましょう。